犬に噛まれたら何科?傷跡を残したくない女性が選ぶべき「形成外科」と受診基準

「飼い犬と遊んでいたら、ふとした拍子にガブッと手を噛まれてしまった」 「水で洗って絆創膏を貼ったけれど、なんだかズキズキ痛む気がする…」 「ネットで検索したら『死亡例』や『切断』なんて怖い言葉が出てきて、急に不安になってしまった」

今、この画面を見ているあなたは、まさにそんな状況で「大げさにしたくないけれど、死ぬのも嫌だ。私のこの傷は、一体どこの病院に行けばいいの?」と、恐怖と迷いの中にいるのではないでしょうか。

結論をお伝えします。その不安は決して間違いではありませんが、パニックになる必要もありません。 あなたが今すぐやるべきことは、「大量の水道水での洗浄」であり、行くべき場所は、傷跡を気にするならば「形成外科」が第一選択です。

なぜ、外科や皮膚科ではなく「形成外科」なのか? 医学的な根拠に基づいて、あなたの綺麗な手を取り戻すための最短ルートを案内します。


【3秒で判断】あなたが行くべき病院が一目でわかるトリアージチャート

犬に噛まれた際、ネットで検索すると「皮膚科」「整形外科」「外科」など様々な情報が出てきて混乱してしまいますよね。 実は、最適な診療科は「傷の深さ」と「あなたが何を優先したいか(機能か、見た目か)」によって明確に分かれます。

迷っている時間は細菌が増殖する時間でもあります。以下のチャートに従って、今すぐ行き先を決めてください。

診療科ごとの役割の違い

ここで重要なのは、形成外科と整形外科は名前が似ていますが、その専門領域(守備範囲)は明確に異なるという点です。

  • 整形外科: 骨、関節、筋肉、神経の機能回復が専門です。「指が動かない」といった機能的な問題がある場合は、整形外科がベストです。

  • 形成外科: 体の表面の「傷」や「変形」をきれいに治すことが専門です。皮膚の欠損や、傷跡を目立たなくする縫合技術において最も専門性が高い科です。

もしあなたが、「指は動くけれど、手の甲に一生残るような傷跡ができたらどうしよう」と悩んでいるなら、迷わず形成外科を選んでください。


なぜ「形成外科」なのか?傷跡を最小限にするプロの技術

「噛まれた傷なんて、どこの病院で縫っても一緒でしょ?」と思っていませんか? 実は、動物咬傷(どうぶつこうしょう)のような汚染された傷の処置において、医師の技術差が最も現れるのが「傷跡」です。

「真皮縫合」という技術

私たち形成外科医は、単に皮膚の表面をホチキスのように留めることはしません。 皮膚の下にある「真皮(しんぴ)」という層をしっかりと縫い合わせる「真皮縫合」という技術を用います。これにより、皮膚にかかる緊張を減らし、将来的な傷跡の幅を最小限に抑えることができます。

一般的な外科処置では、感染リスクを恐れて「あえて縫わずに治す(開放療法)」を選択することも多いですが、形成外科では「徹底的な洗浄(デブリードマン)」を行った上で、可能な限り整容面(見た目)に配慮した処置を行います。

✍️ 一言アドバイス

【結論】: 「形成外科」は美容整形とは違い、保険適用の「怪我を治す」専門家です。敷居を高く感じる必要は全くありません。

なぜなら、多くの患者さんが「形成外科=美容」と誤解して受診をためらい、結果として他科で粗い処置を受け、後から「傷跡を治してほしい」と来院されるケースが後を絶たないからです。最初の処置が最も肝心です。堂々と「傷跡をきれいにしたい」と言って受診してください。


「小さな傷」でも受診すべき医学的理由:3つの感染リスク

「血も止まったし、これくらいで病院に行ったら笑われるかな…」 そう思って受診をためらっているなら、その考えは今すぐ捨ててください。犬の口内には無数の細菌が存在しており、見た目の傷の小ささと、体内で進行する感染症の深刻さは比例しません。

特に注意すべき3つのリスクについて解説します。

1. パスツレラ症:数時間で激変するスピード

犬や猫の口内にほぼ100%常在している「パスツレラ菌」による感染症です。 この菌の恐ろしい点は、増殖スピードです。受傷後、わずか30分〜数時間で患部が赤く腫れ上がり、激痛を伴うことがあります。 「明日様子を見よう」と寝てしまい、翌朝には手がパンパンに腫れて救急車、というケースは決して珍しくありません。

2. カプノサイトファーガ感染症:稀だが致死的なリスク

これは口内常在菌の一種ですが、免疫力が低下している人などが感染すると重篤化しやすく、敗血症に至った場合の致死率は約30%と報告されています。 厚生労働省も注意喚起を行っている感染症であり、「たかが犬の唾液」と侮ることはできません。

 発病した場合は、早期に医療機関を受診し、適切な抗生物質による治療が必要です。(中略)敗血症まで進行した例では、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血症性ショック、多臓器不全へと進行し、死に至ることもまれではありません。
出典: 動物由来感染症ハンドブック – 厚生労働省

3. 破傷風:土だけではない脅威

破傷風菌は土の中だけでなく、動物の口内や牙を経由して侵入することもあります。神経毒により筋肉の痙攣などを引き起こし、最悪の場合は呼吸困難に至ります。 小さな刺し傷(咬み傷)は、菌にとって好都合な「空気が届かない密閉空間」になりやすいため、リスクが高まります。


【医師が警告】病院に行くまでに「やってはいけない」3つの応急処置

病院に行くまでの間、あなたが自宅で行う処置が予後を左右します。 ネット上には様々な民間療法が溢れていますが、医学的に「やってはいけない」間違いが3つあります。

❌ NG 1:消毒液を使う

「バイ菌が入ったから消毒しなきゃ」と思いがちですが、消毒液と創傷治癒は、実は相性が良くありません。 市販の強い消毒液は、細菌だけでなく、傷を治そうとする自分の細胞まで破壊してしまいます。日本創傷外科学会のガイドラインでも、消毒よりも「洗浄」が推奨されています。

❌ NG 2:ラップで密閉する(自己流の湿潤療法)

「湿潤療法(うるおい療法)」は擦り傷などには有効ですが、動物咬傷には禁忌(やってはいけないこと)です。 咬み傷をラップなどで塞いでしまうと、破傷風菌などの「嫌気性菌(酸素を嫌う菌)」にとって最高の増殖環境を作ってしまいます。決して密閉せず、ガーゼなどで保護する程度に留めてください。

✅ 正解:水道水で5分以上洗い流す

唯一にして最大の正解は、「流水による洗浄」です。 傷口を無理に開いてでも、大量の水道水で、牙が入った奥の菌まで物理的に洗い流してください。これが感染リスクを最も劇的に下げます。


よくある質問:治療費、ワクチン、飼い主への対応

Q1. 狂犬病のワクチンは打つべきですか?

A. 日本国内で噛まれたのであれば、基本的には不要です。

日本では昭和32年以降、国内での狂犬病発生はありません。ただし、海外で噛まれた場合や、輸入されたばかりの動物の場合はリスクがありますので、医師に必ず相談してください。破傷風トキソイド(ワクチン)の接種については、傷の深さや過去の接種歴に応じて医師が判断します。 </p>

Q2. 治療費はどれくらいかかりますか?

A. 健康保険が適用され、3割負担で数千円程度が一般的です。

「飼い主がいる犬」に噛まれた場合、相手の飼い主が加入している「個人賠償責任保険」などが使えるケースが多いです。一時的にご自身の健康保険で立て替える場合でも、「第三者行為による傷病届」の提出が必要になることがありますので、受付で事情を説明してください。

Q3. 夜間救急に行っても専門医はいますか?

A. 形成外科の専門医が当直しているとは限りません。

夜間救急では、まず「命に関わる状態か」の処置(洗浄や簡単な縫合)が優先されます。傷跡を気にする場合は、翌日の日中に改めて形成外科を受診し、再評価を受けることをお勧めします。


今日、病院に行くことは「あなたの未来の肌」を守るための投資です

犬に噛まれた傷は、体にとっては小さな穴でも、心にとっては大きな不安の種です。 「大げさだと思われたくない」という気持ちは痛いほど分かりますが、医療従事者として断言します。「感染症の可能性がある咬傷」で受診することは、決して大げさではありません。

むしろ、初期対応の遅れが、消えない傷跡や機能障害として一生残ることの方が、よほど恐ろしいことです。

病院に行って診察を受け、「ああ、大事に至らなくてよかったね」と医師に言われること。それこそが、あなたが今日手に入れるべき最高の結果です。 まずは水道水でしっかりと傷を洗い、お近くの形成外科を探して、電話で「犬に噛まれた」と伝えてから受診してください。

私たちは、あなたの手が元通りきれいになるよう、全力を尽くしてお待ちしています。


[参考文献リスト]

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