猫が「クシュン!」とくしゃみをする姿は可愛らしい反面、続くと心配になるものです。人間と同じように猫のくしゃみは、鼻粘膜に刺激が加わったときに起こる自然な反射反応です。しかし、その原因はとても幅広く、軽度のものから深刻な病気までさまざまです。
特に、くしゃみの頻度が増えたり、鼻水や涙、咳、食欲不振などを伴う場合は、風邪や感染症の可能性もあり、早めの対処が必要になることがあります。一方で、単発のくしゃみだけの場合は、ホコリや花粉といった一時的な刺激が原因のこともあります。
本記事では、猫がくしゃみをする主な原因を体系的に整理し、軽い症状と危険症状の見極め方、家庭でできるケア方法、受診が必要なタイミング、さらに予防のための日常ケアまで、6000字規模で丁寧に解説していきます。
猫がくしゃみをする主な原因
ま
ず最初に押さえておきたいのは、「猫のくしゃみの原因はひとつではない」という点です。鼻粘膜は非常に敏感で、環境の変化や異物、アレルゲン、感染症、炎症など多くの要因が関わります。それぞれの特徴を掘り下げて理解しておくことで、猫の状態を正しく判断できるようになります。
① ホコリ・ハウスダスト
最も日常的な原因がホコリやハウスダストです。掃除中、カーテンを揺らしたとき、窓を開けた直後など、ほこりが舞うタイミングでくしゃみが出ることがあります。猫は床に近い位置を移動するため、人間が感じない程度の微細なホコリでも反応します。
② 花粉(アレルギー)
春や秋の花粉シーズンになると、猫もアレルギー症状を起こすことがあります。くしゃみのほか、鼻水、涙、皮膚のかゆみを伴うこともあります。季節性であることが多いため、時期によって症状が出たり落ち着いたりします。
③ 匂い刺激(香水・スプレー・煙)
香水、柔軟剤、ヘアスプレー、タバコの煙など、強い匂いは猫の鼻粘膜を刺激します。猫は人間よりも嗅覚が鋭いため、匂いによるくしゃみは頻繁に起こりやすいものです。
④ 温度差・乾燥
急激な温度変化や乾燥は、鼻の粘膜を弱らせくしゃみの原因になります。エアコンの使用が増える季節は特に注意が必要です。
⑤ ウイルス感染(猫風邪)
猫ヘルペスウイルスやカリシウイルスによる“猫風邪”は、くしゃみを最もよく引き起こす感染症です。鼻水、目ヤニ、発熱、食欲低下など複数の症状を伴うことが多く、治療が必要です。
⑥ 細菌感染(副鼻腔炎)
風邪の悪化により細菌が増殖すると副鼻腔炎を起こすことがあります。黄色や緑の鼻水が特徴で、抗生剤が必要になる場合があります。
⑦ 異物混入
草の種、小さな糸、ほこりの塊など、鼻に異物が入ると強いくしゃみが続きます。片側だけ症状が出る場合は特に疑わしいサインです。
様子見できる「軽いくしゃみ」のパターン

くしゃみがあっても、すべてが病気のサインというわけではありません。以下の特徴に当てはまる場合は、軽い刺激による一時的なくしゃみであることが多く、まずは様子見が可能です。
① 1日に数回程度のくしゃみ
ホコリや花粉などに一時的に反応した場合は、軽いくしゃみが1日に1〜3回程度起こることがあります。それ以上増えない、あるいはすぐに落ち着くようであれば深刻ではありません。
② 鼻水が透明でサラサラ
透明の鼻水は大きな病気ではなく、鼻粘膜の軽い刺激を示すだけのことが多いです。体調は普段通りであることがほとんどです。
③ 元気・食欲がある
食欲があり、遊ぶ意欲も変わらないのであれば、体全体としては問題がない可能性が高いです。
④ くしゃみが単発・限定的
数時間に1回程度のくしゃみで、長く続かないのであれば、過敏反応やほこりが原因であることが多いです。
動物病院に行くべき危険なくしゃみ症状

一方で、次のような症状がある場合は、病気が隠れている可能性があり、動物病院を受診することをおすすめします。
① 連続したくしゃみ・止まらないくしゃみ
数分おきに立て続けにくしゃみをする場合は、炎症や感染が進んでいる可能性があります。
② 黄色や緑の鼻水が出る
膿のような鼻水は細菌感染のサインです。この場合は抗生剤が必要となることが多いため、早めの受診が大切です。
③ 涙・目ヤニを伴う
猫風邪の典型的な症状で、目の粘膜の炎症も同時に起きていると考えられます。
④ 食欲がない・元気がない
これらの症状は体全体の不調を示す重要なサインです。進行すると体力が急激に落ちてしまうため注意が必要です。
⑤ 鼻をこする・呼吸が苦しそう
異物混入の可能性があり、特に呼吸が荒い場合は緊急での受診が必要です。
家庭でできるケア・対処法

軽いくしゃみの場合は、家庭でのケアで改善が見込めることが多いです。猫に負担をかけず、環境を整えることで症状が落ち着くケースもあります。
① 加湿をして乾燥を防ぐ
加湿器を使って部屋の湿度を40〜60%に保つことは、鼻粘膜を守るために非常に重要です。
② 部屋を暖かく、一定温度に保つ
急激な温度変化を避けるため、冬場は暖房、夏場は冷房で適温(20〜26℃)を維持します。
③ ホコリ対策を徹底する
床に近い場所の掃除、空気清浄機の使用、カーテンや布製品の洗濯などが有効です。
④ 水分補給を促す
新鮮な水を複数の場所に置き、いつでも飲みやすい環境を作ります。ウェットフードを取り入れるのも効果的です。
動物病院で行われる検査と治療

くしゃみの原因は見た目だけでは判断しにくいため、動物病院では必要に応じて以下の検査を行います。
- 身体検査(体温・リンパ・呼吸)
- 鼻鏡を使った鼻腔観察
- レントゲンやCT検査
- ウイルス検査(ヘルペス・カリシ)
治療は原因に応じて、抗生剤、抗ウイルス薬、点鼻薬、点眼薬、加湿療法などを組み合わせます。早期に治療を始めるほど回復が早く、慢性化も防げます。
猫のくしゃみを予防するための日常ケア

くしゃみを未然に防ぐためには、日頃から猫の生活環境を整えておくことが大切です。次のような予防策が効果的です。
① 室内の空気環境を整える
ホコリの少ない環境づくりや、空気清浄機の設置は効果的です。換気も忘れず行いましょう。
② ワクチン接種を定期的に受ける
猫風邪を引き起こすウイルスは、ワクチンで予防できます。特に室内飼いでもワクチン接種は重要です。
③ ストレスを減らす
ストレスは免疫力を低下させ感染症にかかりやすくします。安心できる寝床や静かな環境を作ることが大切です。
④ 清潔な生活環境を維持する
トイレ・ベッド・食器・水飲み場を定期的に清潔に保つことが、細菌繁殖を防ぐことにつながります。
まとめ:くしゃみの“軽症”と“危険症状”を見極めて適切に対処しよう
猫のくしゃみは、一時的で軽い刺激によることがあれば、風邪や感染症、鼻炎など深刻な原因による場合もあります。重要なのは、くしゃみの頻度、鼻水の色、元気の有無、食欲などのサインを総合的に判断することです。
軽度の症状なら家庭で改善できることが多いですが、危険サインが見られる場合は早期の受診が必要です。猫の体調変化には敏感に気づいてあげて、必要なケアを行いましょう。

