猫の「しんどい時の寝方」はここが違う。夜間救急へ行くべきか迷った時の緊急判定マニュアル

夜22時。ふとケージやソファの隅を見ると、いつもならお腹を出してリラックスして寝ているはずの愛猫が、今日はなぜか壁際で背中を丸め、どことなく体が強張っているように見える——。

「体調が悪いの?」「でも、ただ寝ているだけかも……」。暗い部屋で、じっと愛猫を見つめながら、不安で押しつぶされそうになってスマホを手に取ったあなたへ。その直感は、多くの場合正しいものです。

救急現場で10年、数え切れないほどの「SOS」を見てきましたが、猫は痛みを隠す天才です。だからこそ、私たちは「なんとなく」ではなく「数値と指標」で判断しなければなりません。この記事では、今すぐその場でできる「3軸チェック法」を使い、病院へ電話をかけるべきか、朝まで見守って良いかの答えを一緒に見つけていきます。

その丸まり方は大丈夫?「リラックス」と「痛み」を見分ける3つの違い

「猫は丸くなって寝るもの」という思い込みが、時に危険なサインを見逃す原因になります。リラックスしている時の「香箱座り」と、痛みに耐えている「蹲踞(そんきょ)姿勢」は、一見似ていますが、その中身は正反対です。

まず見てほしいのは、筋肉の緊張度です。リラックスしている時は、前足をお腹の下に入れ込み、重心が低く安定しています。一方、しんどい時の蹲踞姿勢(そんきょしせい)は、痛みを逃がそうとするため、重心が少し高く、背中が異常に盛り上がって見えます。

次に、顔の向きを確認してください。リラックスしていれば顔を上げて周囲を伺う余裕がありますが、しんどい時は「壁を向く」「床に顔を伏せる」など、外界を遮断して痛みに耐える仕草を見せます。最後に触れた時の反応です。名前を呼んでも耳を動かすだけで反応が薄い、あるいは触ろうとすると「ウー」と唸る場合は、強い不快感を抱えている証拠です。

 

科学的に見極める。愛猫のSOSを特定する「3分間セルフ・トリアージ」

「寝姿」だけでは判断に自信が持てない場合、次に進めるのが数値と指標による客観的な評価です。これを、救急現場でも使われる「3分間セルフ・トリアージ」と呼びます。

1. 安静時呼吸数(RRR)を測る

最も嘘をつけない数値が呼吸数です。猫がじっとしている時に、お腹が「膨らんで戻る」のを1回と数えます。15秒間測って4倍してください。

安静時呼吸数が1分間に40回を超えている場合、それは生命の危機に関わるレッドフラッグです。 特に、口を開けて呼吸している(パンティング)場合は、1分1秒を争う事態と考えてください。

2. 表情スケール(FGS)で採点する

最新の獣医学では、顔の筋肉から痛みを数値化する「Feline Grimace Scale(FGS)」が推奨されています。

  • 耳: 左右に離れ、外側を向いていませんか?

  • 目: 糸のように細く、強く閉じていませんか?

  • 口元: ぷっくり膨らまず、横に引き締まって強張っていませんか?

これらが複数当てはまるなら、愛猫は「ただ寝ている」のではなく「痛くて動けない」状態にあると断定できます。

✍️ 一言アドバイス

【結論】: 呼吸数を数える時は、スマホの動画機能を使ってお腹の動きを15秒間撮影してください。

なぜなら、パニック状態では正確に数えることが難しく、撮影した動画はそのまま病院での貴重な診断材料になるからです。獣医さんに「呼吸が速い気がする」と伝えるよりも、動画を見せる方が100倍正確に伝わります。この小さな準備が、迅速な処置に繋がります。


【要注意】今すぐ夜間救急へ走るべき「レッドフラッグ」

どれほど夜深くても、どれほど迷っていても、以下の症状が見られたら、今すぐ最寄りの夜間救急病院へ電話をしてください。これらは「寝方」の範疇を超えた、致命的な異常サインです。

  1. ヘッドプレッシング: 壁や床に、頭を強く押し付けたまま動かない状態。脳疾患や重度の中毒が疑われます。

  2. パンティング(開口呼吸): 猫が口を開けて「ハァハァ」と呼吸するのは、運動後以外では異常です。肺水腫や心不全のサインです。

  3. 低体温: 耳や足先が異常に冷たく、ぐったりしている。

  4. 不自然な鳴き声: 唸るような低い声や、絞り出すような鳴き声を上げながら丸まっている。

猫が痛みを示すとき、その姿勢や行動の変化は、生理的なストレス反応の結果として現れます。特に呼吸器や循環器の異常は、安静時の姿勢に顕著な影響を及ぼし、放置すれば数時間で重篤化するリスクがあります。

 

📊  夜間救急に行くべきか?判断基準リスト

項目 様子を見て良い(朝一番で受診) 今すぐ夜間救急へ連絡
呼吸数 1分間に30回未満(穏やか) 1分間に40回以上、または口呼吸
寝姿 どこでも寝る、お腹を見せる 隅に隠れる、背中を強く丸める
表情 目がクリっとしている、表情が和やか 目が細い、耳が離れる、顔が強張る
反応 名前を呼ぶと振り向く、甘える 呼んでも無反応、触ると怒る・唸る

H2-4: よくある質問:寝ている猫を「起こして」確認してもいいですか?

「せっかく寝ているのに、起こしてストレスを与えたくない」という優しさから、確認を躊躇してしまう飼い主さんは非常に多いです。

しかし、救急現場の看護師としてのアドバイスは「生存確認としての声かけは必須」です。本当に寝ているだけなら、声をかけたり軽く触れたりすれば、不機嫌そうにしながらも反応があります。もし、触れても体が硬いままだったり、意識が遠のいているような反応なら、それは睡眠ではなく意識障害の可能性があります。

愛猫を守れるのは、一番近くにいるあなただけです。「起こしてごめんね」という気持ちよりも、「生きていてくれてありがとう」と確認する勇気を持ってください。


まとめ:愛猫の命を守るために、今できる最善の選択を

今、この記事を読み終えたあなたの愛猫の状態はどうでしょうか。

  • 安静時呼吸数は40回未満ですか?

  • 背中の丸まり方に「しなやかさ」はありますか?

  • 表情に「険しさ」はありませんか?

もし、一つでも不安な点があり、呼吸数が多かったり、科学的スケールで「痛み」が疑われるなら、今すぐ病院へ連絡してください。深夜に電話をかけるのは勇気がいりますが、救急病院のスタッフは、あなたのような「愛猫の異変に気づいた飼い主」を待っています。

電話をかける際は、測った呼吸数と、いつからその姿勢なのか、そしてこの記事で見つけた表情のスコアを伝えてください。その具体的な情報が、愛猫を救う大きな一歩になります。

あなたの違和感は、愛猫を守る唯一の武器です。どうぞ、後悔のない選択をしてください。


[参考文献リスト]

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