猫がゴロゴロ言い過ぎ?病気のサインを見極める「SOS判別リスト」を獣医師が解説

「ずっとゴロゴロ言っているけど、どこか悪いのかな?」。

診察室でそう不安げに話す飼い主さんの表情を、私は何度も見てきました。結論から言えば、その心配は決して「考えすぎ」ではありません。

猫は痛みを隠す天才ですが、喉を鳴らすことで自分を癒やそうとすることがあります。今日は、医学的な視点から、その音に隠された本当のメッセージを一緒に読み解いていきましょう。

この記事では、猫のゴロゴロ音が持つ意外な正体と、家庭で1分でできる「SOS判別チェックリスト」を紹介します。読み終える頃には、愛猫の隣で安心して眠れるようになっているはずです。


1: 「うちの子、おかしい?」止まらないゴロゴロ音に不安を感じる理由

夜、静かな部屋で愛猫を膝に乗せているとき、ふと「さっきからずっと喉を鳴らしているな」と気づくことはありませんか?撫でるのをやめても、猫が自分の寝床に移動しても、機械のように鳴り続ける低い振動音。初めて猫を飼い始めた方ほど、「こんなに長時間続くものなの?」「苦しくて喉が鳴っているのでは?」と、暗い部屋で一人スマホを手に取る不安な夜を過ごされているかもしれません。

実は、猫のゴロゴロ音(Purring)には、私たちがよく知る「リラックス」以外にも、複雑な背景があります。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 猫のゴロゴロ音を「すべて幸せのサイン」と思い込まないことが、病気の早期発見の第一歩です。

なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、猫は極度の恐怖や激しい痛みを感じているときにも、自分を落ち着かせるために喉を鳴らす「宥和(ゆうわ)行動」をとるからです。診察室で震えながらゴロゴロ言う猫がいるのは、決して喜んでいるからではありません。この知見が、あなたの不安を「正しい観察」に変える助けになれば幸いです。


2: 甘えか痛みか?1分でわかる「SOS判別チェックリスト」

愛猫の今の状態が「甘え」なのか、それとも体調不良を隠す「痛み」のサインなのか。それを見極めるための具体的な物差しが必要です。以下のチェックリストを使って、現在の愛猫の状態を客観的に観察してみましょう。

📊 判別表
愛猫のゴロゴロ音 判別フローチャート

ステップ 確認ポイント 判断
ステップ1 撫でるのをやめて15分以上経過してもゴロゴロ音が鳴り止まないか Yes / No
ステップ2 呼吸が荒い、または鼻をヒクヒクさせていないか Yes / No
ステップ3 ステップ1・2で異常が見られる場合 至急、動物病院を受診
ステップ3 異常が見られない場合 様子見でOK

📊ゴロゴロ音に付随する「危険なサイン」一覧

観察ポイント 健康なゴロゴロ 注意が必要なゴロゴロ 疑われる疾患・状態
呼吸の様子 ゆったりとした深い呼吸 浅く速い呼吸、鼻翼呼吸 呼吸器疾患、心筋症
体の姿勢 お腹を見せてリラックスしている 背中を丸めてうずくまる 腹痛、関節痛
持続時間 満足すると自然に止まる 何時間も鳴り止まない 高血圧症、甲状腺疾患
目の様子 うっとりと目を閉じている 瞳孔が開いたまま 強い痛み、恐怖、ストレス

3: なぜ「痛い」のに喉を鳴らすのか?医学的にわかった自己治癒のメカニズム

「痛いなら静かにしていればいいのに」と思うかもしれません。しかし、猫にとってゴロゴロ音を発することは、人間でいう「湿布」や「鎮痛剤」に近い役割を持っているのです。

最新の獣医学研究によれば、猫のゴロゴロ音の周波数は25〜150Hz(ヘルツ)*いう一定の範囲にあります。

驚くべきことに、この特定の周波数には、骨密度を高め、組織の再生を促す「自己治癒」の効果があることが科学的に示唆されています。つまり、怪我や病気の猫が喉を鳴らすのは、本能的に自分の体を修復しようとする生存戦略なのです。

特に注意が必要なのが、高齢猫に多い「猫の高血圧症」です。血圧が異常に高まると、猫は落ち着きのなさを感じ、常にゴロゴロと鳴らし続けることがあります。

ゴロゴロ音の持続性と高血圧症は密接に関係している場合があるため、「言い過ぎ」は心臓や血管への負担を知らせるアラートかもしれないのです。

猫のゴロゴロ音の周波数(25〜150Hz)には、骨の再生を促し、エンドルフィンを分泌させて痛みを和らげる効果があることが科学的に示唆されています。

出典: 猫が喉を鳴らす理由 – アニコム損害保険株式会社, 2023年


4: 病院へ行くタイミングはいつ?受診前に準備しておくべき3つのこと

「やっぱり病院へ行ったほうがいいかも」と感じたなら、その直感は大切にしてください。しかし、動物病院の診察台の上では、緊張でゴロゴロ音が止まってしまう猫も少なくありません。獣医師が正確な診断を下すために、以下の3点を準備しておきましょう。

  1. スマホでの動画撮影: 喉を鳴らしているときの愛猫の全身(特に胸の膨らみ方や顔つき)を15秒ほど撮影してください。実際のゴロゴロ音と呼吸の速さを動画に記録しておくことが、診察室での何よりの証拠になります。

  2. 食欲と排泄のメモ: 「いつから」「どれくらい」食べていないか、便の状態はどうかを明確にします。

  3. 環境変化の確認: 家族が増えた、近所で工事が始まったなど、ストレスの要因になりそうな出来事がなかったか振り返ってみてください。


まとめ

愛猫がゴロゴロと言い過ぎる。それは、あなたへの精一杯の「甘え」である場合がほとんどですが、時には「助けて」という小さなSOSかもしれません。

異変に気づいて検索し、ここまで読み進めたあなたの観察眼こそが、愛猫を守る最強の武器です。「うちの子、大丈夫かな?」という不安を、今日からは「よし、しっかり観察して守ってあげよう」という勇気に変えてください。

もし、先ほどのチェックリストで少しでも気になる項目があれば、迷わずかかりつけの獣医師に相談しましょう。動画を一つ撮るだけで、救える健康があります。

[参考文献リスト]

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