深夜、荒い呼吸を繰り返す愛犬の傍らで、不安に押しつぶされそうな夜を過ごしていませんか。「あんなに旺盛だった食欲が急になくなった」「目が合わなくなった」――そんな愛犬の激変を目の当たりにして、震える手でこのページを開いたあなたの孤独と焦燥感、痛いほどよくわかります。
犬のクッシング症候群は、一般的には「食欲が異常に出る病気」として知られています。しかし、病状が末期へと進むと、その様相は一変します。これまでの闘病生活とは違う、命の限界を示す明確なサインが現れ始めるのです。
クッシング症候群の末期症状とは?愛犬が出している5つの重大なサイン

クッシング症候群との闘いは長く、これまでは「いかにホルモン数値をコントロールするか」が焦点だったはずです。しかし、末期状態とは、長年のホルモン異常によって全身の臓器が疲弊し、多臓器不全へと進行している状態を指します。
佐藤さん(ペルソナ)が感じている「いつもと違う」という直感は、多くの場合、愛犬が発している命のメッセージです。特に以下の5つのサインが見られる場合、愛犬は最期のフェーズに入っている可能性が高いと言えます。
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「多飲多尿」の停止と食欲廃絶: あんなに水を飲み、欲しがっていた食べ物を全く受け付けなくなります。これは代謝システムがシャットダウンを始めているサインです。
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安静時の呼吸の乱れ: 動いていないのに肩で息をしたり、呼吸が浅く速くなったりします。
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意識の混濁と反応の低下: 名前を呼んでも耳が動かない、目が合わないといった状態です。
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頑固な低体温、または急な発熱: 体温調節機能が壊れ、手足が冷たくなったり、逆に炎症で高熱が出たりします。
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夜鳴きや落ち着きのない動作: 身体の痛みや呼吸の苦しさ、脳への影響から、不安そうに鳴き続けたり、場所を転々と変えようとしたりします。

【獣医師の視点】末期のリスクを見極める「安静時呼吸数」の測り方
クッシング症候群の末期において、最も警戒すべき合併症は「肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)」です。高血圧や血液の粘性が高まることで血の塊ができ、それが肺の血管に詰まる急死リスクの高い状態です。
このリスクを自宅で最も正確に、かつ負担なく測る指標が「安静時呼吸数」です。
安静時呼吸数と肺血栓塞栓症は、原因と結果の関係にあります。 呼吸数が増えるということは、肺が正常に機能せず、全身に酸素を届けようと必死に抗っている証拠なのです。
📊安静時呼吸数の判定基準(1分間あたり)
| 呼吸数(回/分) | 判定 | 飼い主様のアクション |
|---|---|---|
| 15〜25回 | 正常 | 普段どおり穏やかに見守ってください。 |
| 30〜35回 | 要注意 | 体調変化の兆しです。安静時の計測頻度を増やし、推移を記録しましょう。 |
| 40回以上 | 危険(末期サイン) | 肺血栓や心不全の可能性があります。至急、主治医へ相談してください。 |
【測り方のコツ】 愛犬が深く眠っている時、または完全にリラックスして横になっている時に、胸が「上下して1回」と数えます。15秒間測って4倍するのが最も愛犬に気づかれにくい方法です。
残された時間を穏やかに過ごすための「自宅緩和ケア」ガイド
「病院に連れて行かないと、見捨てたことになるのでは?」と自分を責める必要はありません。末期のクッシング症候群において、愛犬が最も求めているのは延命治療ではなく*QOL(生活の質)の維持」と「飼い主様のぬくもり」です。
専門家の間では、末期において無理な強制給餌(きょうせいきゅうじ)」は、緩和ケアと対立する概念として慎重に扱われます。なぜなら、嚥下(飲み込み)力が落ちた状態での給餌は誤嚥性肺炎を引き起こし、かえって苦痛を増やす結果になるからです。
【自宅でできる最善のケア】
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環境整備: 筋力が落ちた愛犬のために、体圧を分散する低反発マットや、滑り止めのマットを敷き詰めましょう。
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口腔ケア: 食べられなくても口の中は乾きます。湿らせたガーゼで優しく拭いてあげるだけで、不快感は大きく軽減されます。
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感覚の刺激: 大好きな飼い主様の匂いがするタオルを敷く、優しい声でこれまでの感謝を伝える。これらはどんな薬よりも愛犬を安心させます。
✍️ 一言アドバイス
【結論】: 「食べさせること」を目標にするのではなく、「口の中を潤すこと」を目標に切り替えてください。
なぜなら、末期の動物にとって食事は楽しみではなく、時に身体への負担(苦痛)になるからです。一口も食べられなくても、あなたが隣で微笑んでいるだけで、愛犬のQOLは最高に保たれています。この知見が、あなたの心の荷物を少しでも軽くする助けになれば幸いです。
よくある質問:安楽死や延命治療、どう判断すればいいですか?
最も辛く、正解のない問いです。多くの飼い主様が「私のエゴで苦しませているのではないか」と自問自答されます。
判断の一助として、世界的に使われている**「HUUUUUUMスケール(QOL評価指標)」**をご紹介します。痛み(Hurt)、空腹(Hunger)、水分摂取(Hydration)、衛生状態(Hygiene)、幸福感(Happiness)、移動能力(Mobility)、そして「良い日があるか(More good days than bad days)」の頭文字をとったものです。
「治療の目的が『治すこと』から『苦痛を取り除くこと』へシフトした時、安楽死という選択肢は敗北ではなく、愛犬を苦しみから解放してあげるための、飼い主にしかできない最後の贈り物になることがあります。」
出典: 動物の終末期における意思決定ガイド – 日本動物病院協会 (JAHA)
安楽死を選ぶことも、自然な看取りを選ぶことも、どちらも深い愛に基づいた決断です。大切なのは、あなたが「この子のために」と悩み抜いて出した答えこそが、その子にとっての正解だということです。
まとめ & CTA
クッシング症候群という困難な病気と向き合ってきたあなたは本当に、十分すぎるほど頑張ってこられました。
今、愛犬が求めているのは、必死に病気と戦うあなたの険しい顔ではなく、ただ隣で優しく撫でてくれるあなたの温もりです。
今夜、まずは隣で呼吸を数えてみましょう。 もし40回を超えていても、慌てなくて大丈夫です。それは愛犬が「そろそろ準備をしてね」と教えてくれている合図に過ぎません。その合図を受け止め、ただ「ありがとう」と伝えてあげること。それが、今この瞬間にあなたができる、最初で最高のケアなのです。
【参考文献リスト】
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犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の診断と治療 – IDEXX Laboratories
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小動物の終末期ケアガイドライン – 公益社団法人 日本動物病院協会 (JAHA)
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Veterinary Medicine: Managing the end-stage Cushing’s dog – Journal of Veterinary Internal Medicine

